とある畑の中、虫たちが思い思いに食事をしていた。
と、中の一匹がそばの虫を見回し、
ほとほとうんざりしたような顔をしながら
聞こえよがしに声をあげる。
「やあねえ、あんなに赤いのにトマトを食べるなんて。
……何を考えてるの?」
その言葉にトマトを食べていた虫は顔をしかめたが、
その虫は何も気にせずにまた他の虫に向かって声を出した。
「何でナスなんて食べてるの?
あんなに紫なものを食べるなんて野蛮ねえ」
言われた虫はいらだたしげに顔を上げたが、
その虫は変わらずに続けた。
「あそこの大根を食べてるのはなに?
あんなに白いものを食べるなんて下品……」
周りのすべての虫に
そんな言葉を一通り投げかけたあと、
その虫はうっとりとして言うのだった。
「ああ、このとうもろこしの美しさ!
緑に黄色に黄金色の毛。
みんなとうもろこしだけ食べるべきなのに!」
その言葉に虫たちは何も言わなかった。
……なぜなら、その虫は強かったから。