0031
2005-10-21
きらわれものムシ
 とある畑の中、虫たちが思い思いに食事をしていた。

 と、中の一匹がそばの虫を見回し、
ほとほとうんざりしたような顔をしながら
聞こえよがしに声をあげる。

「やあねえ、あんなに赤いのにトマトを食べるなんて。
……何を考えてるの?」
 その言葉にトマトを食べていた虫は顔をしかめたが、
その虫は何も気にせずにまた他の虫に向かって声を出した。

「何でナスなんて食べてるの? 
あんなに紫なものを食べるなんて野蛮ねえ」
 言われた虫はいらだたしげに顔を上げたが、
その虫は変わらずに続けた。

「あそこの大根を食べてるのはなに? 
あんなに白いものを食べるなんて下品……」

 周りのすべての虫に
そんな言葉を一通り投げかけたあと、
その虫はうっとりとして言うのだった。
「ああ、このとうもろこしの美しさ! 
緑に黄色に黄金色の毛。
みんなとうもろこしだけ食べるべきなのに!」
 その言葉に虫たちは何も言わなかった。

 ……なぜなら、その虫は強かったから。