0035
2005-10-27
目先の決断
 あるとき、ふたつの銀行に同時に強盗が入った。
 駆けつけて銃を向ける警官に、
強盗は人質に銃をつきつけ、叫んだ。
「銃を捨てろ! 捨てないと人質は殺す!」

 あるところの警官は言った。
「わかったから撃つな! 
人ひとりの命は地球より重いからな」
 犯人を刺激しないように片手を挙げ、
目を強盗にむけながらそっと地面に銃を置く。
 次の瞬間、火を吹く銃口の先、
警官は胸から血をこぼしながら後ろに倒れた。

 同じ時間、別の場所。
 駆けつけて銃を向ける警官に、
強盗は人質に銃をつきつけ、叫んだ。
「銃を捨てろ! 捨てないと人質は殺す!」
 その言葉に警官は照準越しに
犯人を見据えながら吠えた。
「だまれクズ! 人質を殺したら
その瞬間にお前に全弾ぶち込むぞ!」