0086
2006-01-30
ひこうきごっこ
「おかーさん、あそぼー!」
 三歳になる息子がぱたぱたと足元にやってきました。
「ごめんね、おかあさん、ごはんの仕度しなくちゃ」

 頭をなでながら言うと、
「じゃ、ひこうきごっこしよ! 連れてってあげる」
 ぱたぱたとどこかに行くと、
電車ごっこのように輪になった縄を持って戻ってきました。
「はいはい、じゃあ台所までお願いね」

 輪の中に入ると、飛行機は床を蹴り、離陸します。
 そして空の旅は台所……とは反対の玄関方面へ。
「あれ? どっち行くの?」
 たずねるわたしに、眉を寄せた難しい顔で振り向いて、
「とーきは のーむのためくうこうをかえて、
げんかんまえに ちゃくりくします」
「ええ〜。じゃ、ごはんの仕度はどうするの?」
 笑ってたずねると、
「しりません。つぎのしゅっぱつはあそんだあとです」
「あはは、適当〜」

 すると真顔になって、
「てきとうじゃありません。
でんしゃのよやくもほてるもどうなっても
いっさいほしょうはしないときやくにあります。
のるまえにちゃんとかくにんしてください」

 この子も言うようになったんだなあ。
 思わぬ成長ぶりに喜ばしくなりながら……
とりあえず大きなげんこつを頭におとしておきました。