「また偽装だよ」
昼飯を食っている、横の同僚が憤った。
「国産牛肉が輸入モノだったり、
マンションの耐震性でうそついてたり、
赤字を黒字と言ってみたり。
フグの寄生虫を取るのに
ホルマリンつかってみたりさ。
まったくもってけしからんよな」
……うちは安さでしか
肉は買わないから
産地がどこかなんて知る由もない。
借家だから耐震性なんて考えてないような
ぼろぼろだし……黒字なんて言えるほど金もない。
ましてやフグなんて
実物を見たこともないし、食ったこともない。
正直、なに偽装してもおれには関係ないよな……。
だが額の汗をぬぐい、調子を合わせてうなづいた。
「ああ、ひどいもんだ」
「ああ。なんなんだ、最近の偽装ブームは」
憤慨冷めやらぬ同僚に、おれは心の中でつぶやく。
『ごめん。返事を偽装した』