かつて、人の病を癒す少女がいた。
あるときを境に姿を消したその子を
一人の母親が探し始め……
ようやく、彼女と会うことができた。
質素な部屋に横たわる少女は、
しかし少女と言うには髪も薄く肌は荒れ、
一見、老女のようでもあった。
「お願いします、この子を助けてください!」
母親は苦しむわが子を抱きしめ、彼女の前に歩み出た。
「わたしは……」
こどもらしく軽いが、かすれるような声。
「病を癒すことはできません」
「どうして!」
母親は叫んだ。
「今までだって何人も助けたじゃありませんか。
この子に……この子に死ねとおっしゃるのですか」
非難の声に、少女は枯れ枝の様な
乾いた手をゆっくりと伸ばし、
こどもの頭をそっとなでる。
「わたしは、自分のいのちのかけらを
分け与えてきただけです。
もはやそれも尽きそうな今、
わたしに、死ねとおっしゃいますか」
その声には他意はなかった。
母親は息を飲み、苦しみ、考える。
……そして、口を開いた。