「予算が年々厳しくなっています。
このままでは備品どころか、
人員の削減にすら及びかねないようです。
無駄な出費は抑えるようにしてください」
と、朝の会議で校長が通達した。
「無駄な出費って言ってもねえ」
隣でカタログにしるしをつける古株。
軽くのぞくと、ありえない値段のマウスに丸をつけている。
「ちょ……っ、これ、いくつ頼むんですか?」
「予備も入れたら三十五個かな。ようやく予算下りたから」
おれの頭が勝手に計算をはじめ、結果が口から飛び出した。
「そんなのぼくに買わせてくれたら、
全員分買った上でパソコン本体二台つけてみせますよ」
しかしその人は眉を寄せて言った。
「でも、ほら。領収書の形式があるでしょ?
ちゃんとしたところで買わないと、経費で落ちないのよ」
何か言おうとおれの口が動いたが、
そこから言葉が出ることはなかった。