姉夫婦がこどもを虐待し続け、
ある年の冬、うちで引き取ることになった。
あたらしい家族を加え、
初めてのクリスマスに買い物に出かける。
「さ、なにが欲しい?
好きなものひとつだけなら、なんでも買ってあげる」
おおはしゃぎのうちの娘たち。
デパートのおもちゃ売り場にまっしぐら。
一方、わたしのスカートをつかんで動かない男の子。
「ほら、なにか欲しいのないの? なんでもいいんだよ」
頭をなでると困ったようにすこし眉を寄せて、
「じゃ、チョコレートでもいい?」
わたしは思わず笑って、
「遠慮しなくていいよ。
チョコなら買ってあげるから、他に好きなもの選んで」
言うと驚いた顔をし、
小さな頭で悩んで悩んで、ためらいがちに口にした。
「じゃ、チョコレート、もうひとつ、いい……?」