過疎の進んでいたわが村に、
最近若い人たちが越してくるようになった。
住むもののなくなった家に明かりがともり、
人の気配があふれている。
今までは年寄りばかりで珍しいばかりだったが、
逆に今ではわたしのほうが稀有な存在に見られるようだ。
そしてある日、事件は起こった。
すこし離れた家に警察が来たのだ。
「なにかありましたか?」
若い人たちに囲まれる敷地をのぞき込むと、
「雨どいを修理していたら、こどもの歯がでてきたらしいですよ」
「それで調べたら、軒下からも歯が出てきて……。
どうも殺人事件みたいです」
そこにいた人が教えてくれた。
驚いてわたしは立ち入り禁止のロープのそばに行き、
警察官を呼んだ。
「殺人事件なんてとんでもない。あれはおまじないですよ」
「おまじない?」
若い警官は眉を寄せる。
「こどもの歯が抜けたら、下の歯は上に伸びるように屋根へ、
上の歯は下を向いて伸びるように軒下へ投げるんです」
「へえ、なるほど」
名前と住所を聞かれ、その夜。
戸を叩く音に表に出ると、いかつい顔をした若い男が
何人も立っていた。
「もうしわけありませんが、ご同行願えますか」
「どうしました?」
「あの事件について、なにかご存知ですよね?
捜査を攪乱しようとした理由について、
署の方でゆっくりお話を伺いたいのです」