0210
2006-03-03
君に送る花
「ただいま〜」
 といつもどおり帰ってきた夫がそばまで来て、
「ああ、これ」
 なにかの入ったビニール袋を差し出した。
 開けてみると、カリフラワー。この時期になると
なぜか思いついたように買ってくることがある。
それほど好きだとは思えないけど。
「どうしたの、これ?」
 たずねると、
「うん、ちょっとな」
 もう。ごはんの仕度も済んでるのに。

 とりあえず軽く分けて、湯がいてサラダに。
 いつもの様に食事しながら、ちょっとの不満を口にする。
「ねえ、今日、わたしの誕生日なんだけど」
 すると夫は。
「……うん、知ってる」
 すこし顔をそむけて言った。
「ええっ?」
「だから、花だって買って来ただろ」
 これ、カリフラワーが?
 もそもそとしたその野菜は、どこか恥ずかしい味がした。