ひどい、痛みだった。
病みきったおれの体は夜となく昼となく
ぎりぎりと魂を傷つけ、眠れぬ頭は日々朦朧としていった。
たまにふと霞が晴れることはあったが、
このままいけばいつ戻れなくなるか知れない。
今こうして自分で考えられることは、
次にもうないかも知れないんだ。
――怖い。
自分がなくなるのが怖い。
絶え間ない痛みにさいなまれ続けるのが怖い。
心が死んだあとの体を見られるのが怖い。
おれは、どうなってしまうのだろう。
「なあ、おれ、こうして生きてることに意味はあるのか?」
おれがもう回復することはないと知ってから
付き添い続ける妻。あの頃に比べると、
ずいぶんやつれてしまった。
今ではどちらが病人かわからないほどだ。
「あたりまえでしょ。生きててくれるだけでいいよ」
とまどったような、そしてなにかを――
死を、恐れる目でおれを見て、言った。
……うそだ。
ただ死が怖いだけなんだ。それを見たくないから死ぬなと言う。
たとえおれの頭が死んで、体だけ永らえても、
おれの形だけ残っていれば満足なんだろう。
「生きててくれるだけでいい、本当に」
おれの手を力なくさすりながら口にする。
「おれは、嫌だ」
いつ終わるともない責め苦を休むことなく
受け続けるなんて、もう堪えられない。
この痛みが! 周りの誰をも、
何をも気にすることさえできなくするこの痛み。
おれのことを本当に考えてくれるなら……
正直な思いを吐き出した。
「お願いだ、死なせてくれ」