友達と一緒に入った、観光地の食事屋さん。
出てきたラーメンを一口食べてびっくりした。
「ねえ」
友達にぽそりと。
「これ……まずいよ。おいしくないとか否定形じゃなく、
積極的にまずいよ」
カレーを食べた友達もこくこくとうなづき、
「わたしのも……」
「いままでおいしくないものも
けっこう食べてきたけど、こんなのはじめてだよ。
なにをどうしたら、まずくなるんだろうね」
でも友達はうなづきながらももくもくと食べ続ける。
「食べるの?」
「だって、全部残してたらやっぱり気まずいじゃない」
「気まずいよりも、ただまずいけどね」
そしてなんとか食べきった友達を連れてお店を出た。
「さーって、おなかも減ったし、アイスでも食べよっと」
そこらへんのソフトクリーム売りからひとつ買って
ベンチで食べる。
「うは〜。おいし〜」
甘くてなめらか、ひんやりさくさく。
「おいしい?」
友達がこの冷たいお菓子を見つめる。
「うん、すごくおいしい!
なにかとは比べ物にならないくらい!」
「うう……いいなあ、おなかいっぱい」
「だから、やめとけばよかったのに」
「だって、もったいないじゃない」
がっかりと肩を落とす姿。
「ねえ、お金を投げ捨てるのと、
お金を払って時間と体を使って
ゴミを無理やり食べさせられるのと、
どっちがもったいないと思う?」
「うう……そう言われるとすごくばかばかしい気がしてきた」
わたしはばりばりと最後のコーンを口に入れ、立ち上がる。
「まあ、一番の罪つくりは、食べ物をあんなに落としめた
お店だけどね」