「ほら、そんな顔しないで」
大好きな人がわたしの顔をほぐし、その胸に抱きしめた。
わたしの世界があったかでやわらかで、いいにおいに包まれる。
「なんでわたし、こんなに背が低いんだろ」
ずっとこの背がいやだった。いままで何度もからかわれたし、
悪意も無く侮辱されることもしばしば。
「なあに? また何か言われたの?」
優しい手がわたしの頭をさらさらと撫で、
穏やかな声が体を伝わる振動となってわたしの中に入ってくる。
「わたしももっと大きくなりたい」
「ふふふ。でもそしたら、こんな風にできなくなるよ」
すこしいたずらっぽい言葉と一緒に、
わたしをぎゅうっと抱きしめた。
「どんなになってもかわいいけど、小さいほうがもっとかわいい」
頭に頬をかさねながら、その手が髪をくしゃくしゃと乱す。
「うう……。なんだかちっちゃくてよかった気がしてくる」
最近のわたしは変だ。あんなに嫌だったはずなのに、
言われるたびに本当に小さくても良かったなんて思い始めている。
「でも、おっきいのもいいと思う」
顔をすりつけながら言うと、
「……うん」
甘い声が響いた。
「変だね。昔はこんな無駄に大きいの、すごく嫌だったのに。
今は……こんな風にできるなら、それもいいなって思ってる」
「変じゃないよ」
わたしは言った。
「きっと、変じゃない」