0627
2006-07-07
鉄道会社
「おら、金だせや、コラァ!」
 葬式の場に一人の男がやってきて叫んだ。
「やめてください、お葬式ですよ」
 周りが止めようとすると、
「ああ、葬式だ? そんな金あんならこっちによこせよ。
飛び込んできたあいつのちらばった肉拾い集めて、
葬式できるようにしてやったのはだれだと思ってんだよ。
あいつのせいで手間も金もかかって痛くもねえ腹さぐられてんだ。
それでどれだけ遅れが出て金損したかわかるか? ああ? 
さっさと耳そろえて金払いやがれ!」
「おっしゃることはわかります。でも……あまりに高額すぎます」
 死人の妻がそっと言うと、男は叫んだ。
「はあ? 甘えたこと言ってんじゃねえよ。そんだけ
かかってんだよ。いつになったら払うんだ? このクソが!」
 男の態度に怒った参列者が言葉を投げた。
「なんであいつが自殺したと思う。
おまえが風が吹けば仕事を遅らせ、雨が吹けば仕事を遅らせ、
荷物が多いと仕事を遅らせるせいで、
取引が流れて金も信頼も失ったからなんだぞ。
おれだって死ぬまでには行かなくても、
おまえにはさんざん煮え湯を飲まされてる。おまえは
自分の払った金だけはどうやったってむしりとろうとするがな。
おまえのせいで損したおれたちの金はどうしてくれるんだ」
 すると男は、
「あはは、そんなもんいつものことだろ。気にすんな!」
 悪びれることなく笑った。