「おら、金だせや、コラァ!」
葬式の場に一人の男がやってきて叫んだ。
「やめてください、お葬式ですよ」
周りが止めようとすると、
「ああ、葬式だ? そんな金あんならこっちによこせよ。
飛び込んできたあいつのちらばった肉拾い集めて、
葬式できるようにしてやったのはだれだと思ってんだよ。
あいつのせいで手間も金もかかって痛くもねえ腹さぐられてんだ。
それでどれだけ遅れが出て金損したかわかるか? ああ?
さっさと耳そろえて金払いやがれ!」
「おっしゃることはわかります。でも……あまりに高額すぎます」
死人の妻がそっと言うと、男は叫んだ。
「はあ? 甘えたこと言ってんじゃねえよ。そんだけ
かかってんだよ。いつになったら払うんだ? このクソが!」
男の態度に怒った参列者が言葉を投げた。
「なんであいつが自殺したと思う。
おまえが風が吹けば仕事を遅らせ、雨が吹けば仕事を遅らせ、
荷物が多いと仕事を遅らせるせいで、
取引が流れて金も信頼も失ったからなんだぞ。
おれだって死ぬまでには行かなくても、
おまえにはさんざん煮え湯を飲まされてる。おまえは
自分の払った金だけはどうやったってむしりとろうとするがな。
おまえのせいで損したおれたちの金はどうしてくれるんだ」
すると男は、
「あはは、そんなもんいつものことだろ。気にすんな!」
悪びれることなく笑った。