ある夏の日。部下の一人がネクタイをき
ちんとしめていないと同じ居室のお偉いから咎められた。
そう言われてはたしなめるしかない。
そこで朝っぱら、そのお偉いもいるところで呼び止めた。
「もっとぎちぎちに締めてくれとお達しが来たぞ。
君はどうやらネクタイの意味を知らないようだな」
「ネクタイの意味ってなんです?」
いぶかしげにおれを見る目。
おれは聞こえよがしに言葉を出した。
「休日出勤、サービス残業。自分の健康なんかより仕事、仕事。
金も出ないのにただ体を壊していくしかない。
そうやって常に自分の首を絞めながら働かされる、
サラリーマンの象徴じゃないか」