0714
2006-08-01
学び舎
 久々に会う友人と駅前の居酒屋で飲んでいると、
後ろから不愉快にでかい、何人かの声が聞こえてきた。
「なんだ、おまえ。だせえな」
「ああ、ださいな。おれはもう三人殺して刑務所に入って、
命の尊さを学んで更生したってのに」
「おれは二十五人の女性を強姦して刑務所に入って、
大切なものを学んで出てきたってのに。
おまえ、まだなんにも学んでないのかよ」
 ……ばかか。人を傷つけなくたって命の大切さ、
人間に大事なものを学んでる人間は山ほどいるだろうに。
「ぐっ」
 突然、友人が苦しげな声を上げて体を折り曲げる。
 その後ろには男。友人の背中から生えている
木の柄のようなものをつかんでいた。
「なんだ、何をした!?」
 思わず叫ぶと男は友人の体から血で鈍く光る短刀を抜き、
近づきながら言った。
「おれが命の重さを学んで更生するために、死んでくれよ」