0722
2006-08-03
レーズン
 ゼミでできた友達とよく遊ぶようになったけれど。
 この前のコンパのとき、なにかすごいことを言われた気がする。
 好き、とか……。
「どうしたの?」
 いつものように にっと笑って彼女が訊いた。
「え、ううん」
 とりあえずごまかして、彼女の入れてくれたお茶を飲む。
 こんなにさっぱりとしていかにも無害そうに見えるのに。
こうしていつものように振舞っていても、
今までのあの笑顔の裏にも、わたしに対して
ぬるぬるどろどろを望んでいると思うと、
どうしようもなく汚く思えて仕方がなかった。

 そんな気持ちで友達を見るわたし自体に我慢ができなくなり、
とうとう口を開いてしまう。
「わたしと……えっちしたい?」
 恥ずかしさに驚いたようにはにかむと、
「なにそれ、いきなり」
 それからふと気付いた顔。
「もしかして、わたし、やっぱり昨日何か言った?」
「えと、うん」
 するとどっか照れたような、寂しそうな色を浮かべて、
「うん、好き。それだけは何を言っても変わらないし」
 逆に恥ずかしくなるわたし。
「え、でもなんで? わたしなんてそんな美人でもないし、
かわいくもないよ」
「すごい美人とか、かわいい子とか。
そんな子しか好きになれないなんて、人としてつまらないと思う」
「う……」
 たしかに。
「それに。好き、に理由なんている?」
 穏やかな声。
「理由なんてわからないけど、好きなところならたくさん」
「え?」
「なにより優しいのが好き」
「ちょっ、やだ、やめてよ。わたし、やさしくなんてないよ」
 楽しそうに笑顔を浮かべて。

「そんなことないよ。いつも手伝ってくれるし、
誰か困ってたら助けるでしょ」
「それは、たぶんそのときに
ちょうど余裕があっただけだと思うけど……」
「そうやってすぐ謙遜する」
 いたずらっぽく笑いながら。
「結構照れ屋なんだよね。そういうところも好き」
 頭にいろんなものがのぼってきて、いたたまれない気分になる。
「あはは、かわいー!」
 心から楽しそうに笑う、この笑顔がわたしも大好き。
でもこんな風に見えても、中では……?
「どうしたの?」
「ん? うん。わたしと、どうしたい、とかってあるの?」
「え?」
 きょとんと見る顔に。
「わたしを、どうにかしたい?」
「え? ええ?」
 寄せた眉が気楽に戻って。
「……あはは、そういうこと? 
じゃあたとえば、好きな人がいて。
付き合う前、どんなこと思う?」
 柔らかな笑顔で訊いた。
「え? それは、一緒にいたいとか、話してみたいとか……」
「一緒のことをしたいとか、笑っていて欲しいとか」
「うん。……って、え?」
「わたしも、おんなじ」
 どん、と胸をつかれたような感覚。

「おんなじ?」
 そうだったんだ。
 好きなだけ、ただ、好きなだけなんだ。
 誰かを好きだっていう気持ちは他の人となにも変わらないのに。
「じゃあ、なんで特別に見られなきゃいけないの?」