0740
2006-08-08
ひまご
 海の向こうに住むおやじたちに、
ようやく孫の顔を見せに行く事ができた。
行こう行こうとは思っていたものの休みがとれず、
息子はもう三歳になってしまった。
「おうおう、よく来たな」
 ずいぶんとやせたおやじが笑顔を見せて、
「見ない間にこんなにでかくなったのか」
 初孫を高く持ち上げた。
 普段は人見知りをする息子も親族だとわかるのか、
楽しそうに手足をばたつかせる。
「ああ、おまえの小さいころにそっくりだ」
 高く支えたまま笑っていたおやじだったが、
ふとさびしげな顔になり、
「しかし……月日の流れるのは早いもんだな」
 そっと息子を下に降ろした。
 そして薄い笑いをなげかけて、
「できればうちらが生きてる間にひまごの顔を見せてくれよ」
 しわの手で頭をなでる。
 悲しい顔をした息子は――ズボンを下ろし、パンツをおろした。