わたしのお仕事はウェブデザイナー。
いわゆるホームページを作る人だ。
先輩は、ウェブデザイナーは優れた料理人のようにあれ、
と言う。中身がおいしいのはもちろんだけど、
人はまず目で食べる。だからこそ見た目もよくなくてはいけない。
それからバランス。外食で栄養がかたよるなんて
言われないように、それぞれの要素をバランスよく配置する。
そして技術。海鮮スパゲティだからって高いカニを
殻ごといれるようなまねは慎み、食べる人が食べやすいように、
使う人が使いやすいように料理する。
「できました〜!」
注意を守ったいいものができたと自信を持って見せに行くと、
先輩ははじめ満足そうにうなづいていたけれど……
小さく声をあげて眉を寄せた。
「今までで一番良くできてると思う。でもね」
振り返る笑顔は、それでも優しい。
「もう一つ、大事なものが足りないみたい」
「なにか至らないところ、ありました?」
「わたしたちは新しい料理を提案する。
でも、それをお店で作り継いでいく人は
たいてい同じだけの腕はないもの。
なら、その人がたとえ舌が悪くても
それなりの味になるような工夫がなくちゃ」
「その心は?」
わたしの問いに、めがねの奥の瞳が輝く。
「決め手はソース!」