中学生の息子を連れて再婚した。
はじめはうまく行きそうだったが、すぐに問題が起こった。
息子が部屋の片付けもしなくなり、
そこで妻が口走ってしまった食事抜き、という言葉を受けて
何も食べなくなってしまったらしい。
まあ、なにごとも最初はもめるものだ。
おれは帰宅すると、息子と向き合って訊ねる。
「なあ、どうしておかあさんを困らせるんだよ。
昔は言われなくたって部屋くらい片付けてたろ?」
「別に……困らせてるわけじゃないよ」
気まずそうに目を泳がせる息子。
「食事だってしてないんだろ?」
「いや、食べてるよ。買って」
すこしほっとする。
「でも、小遣いだってそんなに続くわけじゃない。
おかあさんだって新しい生活に慣れなくて、
うっかり言っただけなんだ。何があったか知らないけど、
意地張らずにまた一緒に食べてくれよ」
するとおれの目を見つめ、
「ほんとに知らない? なにもわからない?」
真剣な声で訊いた。
「そりゃ、前のおかあさんとは違う。死んでないのに再婚して、
割り切れないものがあるんだってのはわかる。
精一杯の反抗かもしれないけど、
あの人だって一生懸命やってるんだよ」
「ちがう、そんなんじゃない」
息子は首を振る。
「え?」
聞き返すと、つぶやいた。
「部屋を散らかしてれば、アレを食べなくていいんでしょ」