0833
2006-09-05
煙の裏のほう
「さて。わが国は今まで老若男女たばこを吸っていたが、
これを制限するにはどうしたらいいか考えたいと思う」
 そんな言葉で、とある国のお偉いが会議をはじめる。
「大統領、そんなことをすれば売り上げが落ち、
税収入も落ちてしまいますが」
 一人の言葉に、彼は答えた。
「わかっている。だがたばこを吸うのは
こどもの健康を脅かすだのなんだの内外からけちがついたのだよ。
あのクソど」
「大統領」
「……ああ失礼。彼ら、を納得させるだけの
設定をしなければならないんだ」
「問題がこどもの健康を阻害する、ということでしたら、
大体の人間が成長を終了する、24歳くらいでどうでしょう?」
「ふむ……」
 大統領はうなづくが、横から声。

「それでは遅すぎる。正直健康なんてどうでもいいから、
うまい理由をつけてすこしでも年齢を下げて
税収をあげるほうが大事だろう」
「では、20歳からというのはどうだ」
「なぜ20なんだ? 切りがよすぎでそらぞらしく見えないか?」
「なら、徴兵を20歳までひきあげて、
そこからが成人ということにしたらどうだろう。
兵役にもつかないこどもはたばこを吸うな、
たばこは大人の特権であると示せば、
たばこ自体に価値がつくだろう」
「徴兵期間はケツ掘」
「議事録! 議事録!」
「……ああ、すまん。徴兵期間は戦友と友好を
あたためあうことやたばこに薬くらいしか楽しみがないから。
そこで解禁となればよく売れるだろうな」
「と、いうことでいかがでしょうか?」
 場の全員の視線が集まる中、大統領は深くうなづき、
顔をあげて言った。
「よし、それで行こう!」