0852
2006-09-08
汚すの大好き
 雪の積もったある冬の日。彼と一緒に歩いていると、
どこかを見た彼が悲しい顔をした。
「どうしたの?」
 たどってみると、神社の中には壊された雪だるま。
「あ〜。やられちゃったね」
 そのままにしておいたって誰も困らないのに。
 ひゅごっ、ひゅごっ、ひゅごっ。
 雪を靴裏で踏みしめながらすこし歩くと、
「神社ってよくばかがたむろしてるだろ?」
 彼が言った。
「夏には近づきたくないね」
 わたしはこたえる。

「下卑たやつほど腐った紫を着るし、
魚が住めないほどの清流を、自分たちも住めるように
無理やり汚してるって感じなのかねえ、奴らは」
「あはは、でも確かにね」
「基本的に人間には二種類がいる。
聖なるものを聖なるものとしてあがめる者と、
聖なるものを汚して喜ぶ人間。
邪悪な連中は規律があれば規律を壊し、
きれいなものがあれば汚さなければ気がすまない。
それを自分でできない小心者は、
他人がやることでよろこびを感じ、もてはやすからたちが悪い。
小中学の女の子なんてまさに悪魔の使徒どもだな。
雪だるまを見てどうするかを観察すれば、
人間性のテストに使えるんじゃないか?」
 不満げな彼の言葉にうなづくところもあったけど、
降っただけの雪に一番に足跡を残すのが好きなわたし。
 すべてを同意はできなくて、
ちょっと後ろめたい気持ちになった。