雪の積もったある冬の日。彼と一緒に歩いていると、
どこかを見た彼が悲しい顔をした。
「どうしたの?」
たどってみると、神社の中には壊された雪だるま。
「あ〜。やられちゃったね」
そのままにしておいたって誰も困らないのに。
ひゅごっ、ひゅごっ、ひゅごっ。
雪を靴裏で踏みしめながらすこし歩くと、
「神社ってよくばかがたむろしてるだろ?」
彼が言った。
「夏には近づきたくないね」
わたしはこたえる。
「下卑たやつほど腐った紫を着るし、
魚が住めないほどの清流を、自分たちも住めるように
無理やり汚してるって感じなのかねえ、奴らは」
「あはは、でも確かにね」
「基本的に人間には二種類がいる。
聖なるものを聖なるものとしてあがめる者と、
聖なるものを汚して喜ぶ人間。
邪悪な連中は規律があれば規律を壊し、
きれいなものがあれば汚さなければ気がすまない。
それを自分でできない小心者は、
他人がやることでよろこびを感じ、もてはやすからたちが悪い。
小中学の女の子なんてまさに悪魔の使徒どもだな。
雪だるまを見てどうするかを観察すれば、
人間性のテストに使えるんじゃないか?」
不満げな彼の言葉にうなづくところもあったけど、
降っただけの雪に一番に足跡を残すのが好きなわたし。
すべてを同意はできなくて、
ちょっと後ろめたい気持ちになった。