ずっと世間とは隔離されて育ったとある国の王子様。
資金援助を求められて訪問した国で、
親しいお供だけを連れてそっと街へと抜け出しました。
「ああ、顔も知られていないこの国なら
庶民の暮らしが味わえるぞ!」
街を歩き、お店を冷やかし。
そして見つけた安い食堂に入ります。
「いらっしゃいませー! なんめいさまですか?」
看板娘の明るい声につられるように、王子様は答えました。
「そうだが?」
瞬間、張り詰める空気。
――な・なぜわたしの名を?
この国では隅々までわたしを知っているというのか?
王子、ナン=メイは驚愕しながらも感心します。
――何人かって訊いて、『そうだ』ってなに?
何人席に案内すればいいの?
食堂の看板娘はいつもと違う返事におでこの汗を拭います。
お互い変な顔をしながら、しばらく見詰め合う二人なのでした。