広い荒野の真ん中の道を車で走っているときだった。
天気はさして良くもなかったが、
端も見えないような長い道を気持ちよく走っていると、
後ろの座席で息子が声を上げた。
「空から指が伸びてきた!」
また何か変なものを見つけたのかな?
軽い気持ちでちらりと横を。
なんでもないと前を見て――思わず横へ振り向いた。
そこには本当に、巨大な指のようなものがあった。
黒い雲から伸びてくる指、そして悪魔のように細く鋭い爪。
地面を突き刺すように長く、長く伸びはじめている。
「なにあれ〜?」
お気楽にはしゃぐ息子をよそに、わたしは車で逃げ出した。
あんなのに触れられたら、きっと人など簡単に死んでしまう。
「ちゃんと座ってて! あれは、あれはね――」
そしてその夜。あの悪魔の爪、
竜巻でたくさんの家畜と人たちが死んだと新聞は告げていた。