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ローソク出せのこと
俗称、『ローソク出せ』と呼ばれるこの行事は
北海道の大部分では月遅れたなばたの八月七日に、
函館などの一部分では七月七日の本たなばたに行われます。

行事としては、たなばたの夜に
こどもたちが五・六人くらいの小集団をつくり、
夜の街にちょうちんを手に繰り出します。
行事参加の合図がある家を見つけては勝手に玄関にあがるか
もしくは軒先で家の人を呼ぶかしたのち、
ローソク出せの歌を歌います。

(※昔は家の戸に鍵もかけなかったので、
  扉を開けて、「ごめんくださーい」と
  家の人を呼ぶような感覚です。
  不法侵入やいたずらのように
  不快に思われることではありません)

家の人はやってきたこどもに、ローソクやお菓子を渡します。
こどもはそのお菓子を受け取るとその家をあとにします。
だいたい決まった時間になるまで家々を訪ねてはもらい歩く――
という行事です。

かなり古い時代(祖父母や両親の時代)には
もらうものは実際にローソクだったようですが、
すこし古い時代(わたしのこども時代)では
もらうものはお菓子でした。
風習自体、時代によって変わっていくということの
あらわれでもあるでしょう。

わざわざ夜に外に出る、こどもだけで夜の街をゆくという
特別な行為ができるうえに甘いものまでもらえるなんて、
まさに特別な日と思える行事でした。

でも最近では人々の考え方の変化や治安の悪化などがからみ、
行事自体が行われなくなったり時間を変更して
昼間におこなわれたりとその形を変えているようです。