0037
2005-11-02
人の質・生命の質
 ある日の休日。
病院の一角で、中年男性を含む
数人が布おむつをたたんでいた。

「たいへんですねえ、せっかくのお休みに」
 中年の女性達が声をかけると、
「いえいえ。普段息子がお世話になっているのに、
こんなときしかお手伝いできませんからね」
 ときどきはじける静電気に顔をゆがめながらも、
几帳面に布をたたんでいく。

 と、突然騒がしくなる廊下。
「なにかあったんでしょうかね?」
 ドアを開け顔を出すと、
小走りにどこかへ向かう白衣の女性に訊ねた。
 すると彼女は答えて、
「なんでも有名人がだれかのお見舞いに
来てるらしいですよ。ボランティアで」

 ボランティア!

 その言葉を聞いて、部屋に戻った彼は布を握り締め……
投げつけようとする手を押さえ、
きれいにしわを伸ばしてたたむのだった。