0068
2006-01-24
薄っぺら
 不況のあおり、そして近くに
大きなスーパーができたことで、
うちの売り上げは地に落ちた。

 爺さんの代から続いていた八百屋だ、
つぶしたくなくてできることはなんでもした。

あちこちに頭を下げ、金策に走り。
営業時間に対抗するために
夜遅くまで店を開けておきもした。

 だがすべてはゴミとおんなじ。

売り上げの下落が止まることはなく、
自分も体を壊し、店はつぶれた。
 病院に入る金もなく、
自宅で無為に寝込むだけの日々。

 ある日、女房が持ってきた手紙を開けたとき、
勝手に涙があふれ出た。

 その一文――

 『貴殿にはますますご清栄のこととお喜び申し上げます』