祈るような焦れるような何日かが過ぎ、
山小屋の電話が鳴った。
老女が震える手で受話器を取ると、
向こうからは明るい声がきこえてくる。
「ご主人、発見されましたよ!
軽い脱水を起こしているようですが、
それ以外命に関わるようなことはありません」
老女の目から涙がこぼれだす。
「あああ〜、あああ〜」
ありがとうございます、ありがとうございます、
言おうとした言葉は空回り、
口からはうめきのようなものしか出てこなかった。
それから数週間後、海から夫婦の死体が上がった。
飛び込んだと思われる岸壁に残された紙にはこう書かれていた。
『捜索費用をお支払いすることができません。
死んでお詫びいたします。どうか探さないでください』