夜半過ぎ、大雪の降った日。
朝になると庭に雪だるまが立っていた。
愛着がわいたのか、娘は飽きることなく
その雪の塊を眺めている。
もし解けてしまえばさぞかしがっかりするに違いない。
そこでおれは夜中にそっと作業を開始する。
一日目の夜。まずは頭部を削り、
中に雪のような見た目のものを埋め込んだ。
二日目の夜。落ちた目玉と鼻と口を移植。
三日目の夜。解けかけの頭の補強と、体幹部に具剤の追加。
四日目の夜。体幹部の補強。
……こうして解けない雪だるまが完成した。
それから何日かしたある日。
家に帰ると娘が勢いよくやってくる。
「おとーさん!」
精一杯のきつい目でおれをにらみながら、
「あれ、なに?」
「あれ、ってなんだ?」
ききかえすと口をとがらせる。
「ゆきだるま!」
「ああ、いいだろ? これでずっといっしょにいられるぞ」
「ばかぁ!」
叫ぶ。
「もう雪だるまじゃないじゃない。
おとうさんはいのちの大切さを知りません!」