過疎化が進むひなびた町。
このままではただ廃れて行ってしまうと、
議員先生をもてなして道路の一本、
新幹線の一本でも町そばを通るように
してもらうように町をあげて計画した。
そして今は先生お望みの釣りに
おれが付き合うことになった。
「おっと」
昼飯時。町のみんなで用意した弁当のサンドイッチが
議員先生の手から落ちた。
「お、見てみろ。まるでこの国みたいじゃないか」
吸っていなくともヤニくさい息を撒き散らして言う。
「きつい・きたない・きけん、だったか。
うちらからしたらゴミのような仕事しかできない連中みたいに
下の方が汚れちまった。
『国家サンド』なんつって売り出したら一商売できないかな」
自分で言って満足げに笑う男。
おれたちがどんな思いをしてこれを用意したと思うんだ。
それを落としておいて、そんなことしか言えないのか?
「それなら……こうでしょう」
おれは落ちたサンドイッチを拾うと、
ひっくり返して地面に落とした。
「上は物欲と権力と不正にまみれて汚れ。
下は低い賃金、厳しい労働条件で汚れ。
……でも、残念ながら共通するところがあります。
わかりますか?」
答えはいらなかった。
あいつがなにか言うところなど聞きたくなかった。
「それは、どちらもこの国を支えてるってことです」
おれは悲しいサンドイッチを拾い、口に入れた。