「さあ、追い詰めたぞ」
剣を構える男たちの中、
手ぶらの若い王子が言った。
その向かいには主君をかばうように立ちふさがる男と、
弱々しく頭を抱えてうずくまる、若いと言うよりは幼い王。
「果たしてそうかな?
この身を捨ててあなたを殺すくらいたやすいこと」
両手で剣を構えなおす男に、若い王子は言った。
「お前ほどの男なら、この状況がわからないでもあるまい?
わたしを殺せばこの者たちがお前を殺し、
その間抜けな王は切り刻んで殺す」
「くっ」
片手を剣から離し、後ろの王をかばうように手を伸ばす。
「なぜそこまでこだわる?
その男、それほど値があるとは思えんが」
「父の命をお救いくださった先代への恩義。
それを裏切るわけにはいかん」
王子は楽しげに口元をゆがませ、言った。
「ますます気に入った。おまえはわたしの元に来い!」
「な、なにを……」
「自分でわかっているはずだ、おまえがどこにいるべきか。
わたしとともにあるならば、王の命は約束しよう。
おまえは自分の身を捨てて、王を救うのだ!」
謳うように差し出した手。懐から何かが落ちた。
床に落ちたのは、豪華なおまけに
貧相なチョコレートのついたお菓子の箱。
王子はそれを拾うと懐に戻し、
軽く咳払いをして改めて手を開いた。
「さあ、来い! おまえも王も、わたしが守ってやる!」