「おい、おまえいつもゆるいよな。
今日は部長が来てるんだし、ネクタイはきっちり締めてくれよ」
と上司が言った。
「あ、はい」
部長部長か。どれだけ偉いんだよ。
思いながらネクタイを直していると、
「いや、そんなんどうでもいいよ」
後ろからかけられた声は……部長。
振り向くおれたちにその人は言う。
「もともと楽でもない仕事だろ。
服までぎちぎちにしなくていいから、
もっと楽にしてすこしでも仕事の負担を減らそうや」
そして部長は上司の肩に手を置き、
「君はアレやな。電車の母親」
「え?」
「『ほら、あのおじちゃん怖い顔で見てるから、
静かに座ってなさい!』」