びゅおー。がだがだがだっ。
雨戸を激しく揺さぶる風の音。
風につかまれる雨が幕になって屋根を叩く。
「怖いね、こわいね」
初めての台風におびえる息子をあぐらに乗せ、
テレビのスイッチを入れる。
『台風はいまだ進路を定めておらず、
今後も勢力を増しながら非常にゆっくりとした速度で
北上を続けると見られます』
テレビの中の男が言う。
手にした棒の先には北の方に行くにつれて、
やけに大きくなる予想円。
「まだまだ台風は強くなるってさ」
頭をなでながら言うと、息子は不安そうに顔をあげて口にした。
「あんなに大きくなったら、家も全部壊れちゃうよ」