今日は四月一日。
やはりこの日は嘘をつかなければと思ったが、
なかなかいい嘘が思いつかない。
変な嘘をついてだれかを傷つけてもつまらないし、
どうせなら軽くて後でみんなで笑えるのがいい。
だがぼくにはそんな機知はないようで。
考えに考え抜いて、寝る前にむりやり一つ、搾り出してみた。
「いままでずっと黙ってたんだけど……」
振り向く妻に、
「実はぼく、左利きだったんだ」
すると軽く驚いた顔をして深くため息をつき、
ぼくの後ろを指差す。
「今日は四月二日だよ」
「ええっ、うそ!?」
思わず振り返ってカレンダーを確認していると……
「うっそ〜!」
後ろから抱き付いてきた。
「ああっ、やられた」
楽しそうにぼくの頬に頬を寄せ、そっとささやく。
「ね、知ってた? エイプリルフールって、
四月一日の午前中だけなんだよ」
「そんなの知ってたよ。……さ、寝よう」
電気を消して横になり、しばらく。
妻が寝たのを確認して、ぼくはさっきの言葉を調べに向かった。