0160
2006-02-20
耳よりな話
 仕事帰りの酒場。
カウンターの隅で一杯ひっかけていると、
目つきの鋭い男が隣にやってきて、言った。
「なあ、あんた。耳よりな話があるんだが」
 どうせい酔っ払いのたわごとだろう。
おれは酒のつまみにでもと話を促した。
「今のこの国は腐ってる。
よその国の奴らが入って来てはおれたちの仕事を奪い、
そこらへんでろくでもない事件を起こしやがる。
……あんた、おれたちの仲間になって、
あいつらを掃除しないか? 
金は入るし街はきれいになるし、悪い話じゃないだろう?」
 おれの返事を待ち望む男に、おれはため息をついた。
「それはまた……耳よりと言うより、右よりな話だな」