飲み会から帰って軽くメシを食っていると、
女房が向かいの席に座り、真剣な声で訊ねた。
「ねえ、何かわたしに隠してること、ない?」
ぎくっと腕が震え、落ちそうになる箸。
……まさか、冷蔵庫のひとつだけ残ってたアイス、
食ったのがばれたのか?
それとも、おみやげでもらったとかで
置いてあったまんじゅうを、
うっかり全部食ったのはまずかったか?
「な、なんのことだよ」
平常心、平常心。唱えながらきき返すと、
「これ、スーツから出てきたんだけど」
汚れた女物のハンカチをテーブルの上に置く。
さっき玄関先でうちの洗濯物だと思って拾ったのに。
「浮気なんて……してないよね?」
不安そうに訊ねる女房に、
「ばかめ!」
思わず叫ぶ。
「くだらないことではらはらさせるんじゃありません!」