0172
2006-02-23
しみこむ
 まだ手のかかるこどもを夫に預けて、
ひさしぶりに友達と旅行。
 昼間っから温泉に入り、
ゆったりと夕食を食べ、まったりと寝そべって
テレビを流しながら無為な時間を楽しんだ。

「あ〜、こんなの久しぶり〜」
 寝てしまいそうになりながら、
なんの心配もない自由を噛み締めていると、
「ちょっと見ない間にずいぶんやつれたもんね」
 軽い口調で友達が言った。
「え〜、やっぱり?」
 思わず顔をさする。
最近ずいぶん老け込んだ気がする。
なのに、友達は……

「いいね、独身でいい仕事もして。
なんかずいぶん生き生きとしてる」
 わたしの言葉に彼女は驚いた顔をし、
あきれたように笑った。
「なに言ってるの。納得して結婚したんでしょ? 
周りを見たってしかたがないよ」

 ああ、すごい……。
心にも余裕があって、自信にあふれてる。
こどものことでいちいちあたふたして
泣きそうなわたしとは違うんだ。

 何も言えなくなってテレビに目を映すと、
高そうなケーキを作っているところが映っていた。
 スポンジはふっくら、
チョコクリームにくだもの。
上には周りにはみ出しながらチョコをたっぷり。
仕上げに飛び散らせながら粉砂糖をばさばさ。
「うわ〜」
 二人で同時につぶやいた。

「「もったいない」「おいしそう」」