中学生の女の子が殺されるという事件が起こった。
写真を見る限りすれてもいない、
かわいい感じの娘さんだった。
インタビューされている、
どこまで本当かわからない他人の話しだと、
その子は毎朝会えば自分から挨拶し、
話せば知性の片鱗ものぞかせる、
快活ですてきな女の子だったらしい。
……ばかめ! いまどき
そんな子がどれだけいると思ってるんだ。
どうせ殺すなら電車の中で
床に座って化粧するだのバカ話するだの、
声をかけても侮辱で返すような、
下品で下劣なやつらにすればよかったろう。
その一か月後、犯人が捕まったという話が
大々的に放送された。
日を追うごとに明らかになっていく動機。
曰く、女の子は犯人と顔見知りで、
毎朝会えばにこやかに挨拶をして、
さっぱりと制服を着こなし、
いつも笑顔を見せるような
かわいい子だったらしい。
だからこそ一方的に欲望をつのらせ、
押し付けようとしたのを拒まれたことで殺したのだという。
……この外道め!
「どうしたの、おとうさん、難しい顔しちゃって」
振り向くと、娘がにこにことわたしを見ていた。
親のひいき目をのぞいたとしても
かわいく生まれたものだと思う。
挨拶もするし、気持ちよくお礼もする。
勉強だって一生懸命な、自慢の娘だ。
だからこそ、わたしは涙を飲んで口にする。
「いいかい、これからは近所の人と会っても
一切挨拶せずに無視するんだ。
髪は色を染めても抜いてもいいからばさばさにして、
制服はだらしなく着る。
そして常に頭の悪いしゃべり方をすること。いいね」