0190
2006-02-28
価値あるもの
 恋人が男に刺され、そして、死んだ。
だが、犯人の男は執行猶予だけで終わった。
 弁護士の力だと噂され、
おれはその事務所に駆け込んで叫ぶ。

「なぜあんな奴をかばわなきゃいけないんですか! 
当人の犯した代償として、
罰をあたえるのが当然ではないんですか? 
人を殺して執行猶予だけなんて。
被害者の人生は加害者のそれだけしか値がないと? 
そして加害者の人生は善人を犠牲にしてまでも
守らなければいけないものなのですか!?」
「うん」
 弁護士は短くうなづいた。
「金さえ払えばね」