小さなこどもがテーブルの上に置いた磁石で遊んでいる。
「ねえ、おかあさん、見て〜」
そばにいる母親に呼びかけ、
「おとうさんも」
そのそばにいた父親にも呼びかけた。
二人がのぞきこむのを確認すると、
こどもは大きな磁石を手にして、
散らばった小さい磁石の中に入れた。
がちがちと音を立てて、離れていた磁石は
大きな磁石にくっつく。
「ほら」
手にした磁石を動かすと、ほかの磁石もともに動いた。
まるでひとつの大きな塊のように。
それを見ていた父親は
中心の大きな磁石をつかむとテーブルの下へ投げつけ、
あっけにとられたこどもが泣き出す。
「なにしてるの!」
母親が言うと、父親は苦々しい顔でつぶやいた。
「磁石まで資本主義か」
「え?」
「最初にでかい金持ってる奴はまわりの金もすべて集めやがる」