「親からもらった体に穴を開けるなんて何考えてるんだ」
ピアスの穴を開けたらおとうさんに言われた。
たかがピアスの穴ぐらいで……。かちんときた。
そしてすこし経ったある日、おとうさんが頬を押さえながら
帰ってきた。
「虫歯がひどかったらしくてさ。治療に結構時間かかったよ」
開けた口の奥には、銀色の詰め物がぎらり。
「ねえ、おとうさん」
わたしは髪をあげて、耳を見せる。
「これ、むかしピアスの穴開けたところ」
かぶれるのでそのままにしていたら、
いつのまにかふさがってしまっていた。
「あとわたし、虫歯なんてないよ」
「なんのことだ?」
「歯磨きもきちんとしないで
親からもらった体に穴を開けるなんて……
なんて、わたしは言わないから安心してね」