今度催される学芸会の劇を何にするか、
先生たちが集まって話し合いをした。
わたしたちの一年生は……
「大きなやさいの話なんてどうですか?」
わたしは言う。
畑に野菜を植えたおじいさんが大きく育つように祈っていると、
ぐんぐん大きくなる野菜。
それをみんなが力を合わせて抜く、
というテンポもよくて楽しいお話。
でも、
「とんでもない!」
代々この学校で育ってきた学年主任が叫んだ。
「うちの学校はどんなこどもがいるか知っているだろう?」
「ええ、政治家のこどもさんたちですよね」
「なら、わかるだろう」
ため息をつきながら首を振り、
「市民が育てて大きくなった野菜、
つまり政府を、老いも若きも動物もすべてが力を合わせて
転覆させようとする話だぞ?
しかも最後は げっ歯類のしっぽごときで倒されるなんて、
劇でやった日にはどうなることか……!」
わたしはしばらくぽかんと口を開けていたが、
はっと気を取り直して口を開く。
「では、もも少年はどうです?」
桃から生まれた少年が、悪い鬼を退治するお話。
これならだれもが知っているし、
動物を家来にするんだから政治家だって大喜びするだろう。
「だめだ、だめだ」
学年主任はあきれたように首を振る。
「桃から生まれるなんて分けのわからない生まれ方をしたのが、
市民から物品を税金で徴収する政府を鬼とみなして、
くだらない畜生のような人間を買収して革命を起こすような話、
やったらどうなるかくらいわかるだろう?」
「どうなるかはわかりませんが」
吐きそうになりながらわたしはなんとか口にする。
「お望みのようにしていたら、
主任のような人間が育つとわかりました」