友達の好きなお菓子を食べながら、
一緒にテレビを見ていたらそのコマーシャルが流れた。
『おいしくなって新登場!』
またか……。
友達を見ると、にこにこしながら気にせず食べ続けている。
「ちょっと、何も思わないの?」
「え?」
きょとんとわたしを見る目。
「それ、おいしい?」
「おいしいよ」
罪のない顔で笑った。
「ねえ、死ぬ前、死んでない人間の状況ってどんな感じ?」
「え? ……生きてる?」
「じゃ、おいしくなる前のお菓子って?」
「おいしくない?」
わたしはお菓子を指でさす。
「それ、おいしい?」
ようやくわかったのか、頬をふくらます。
「おいしいよ」
「作ってる会社が今までのはおいしくなかったから
おいしく作り直したって言ってるのに、それ、おいしいの?」
「おいしいよ、おいしいもん」
中身の少なくなった袋を傾けて一気に食べる友達。
口に入れすぎて食べるのに苦労しながら、ぽつりとつぶやいた。
「うう……。人としての尊厳を傷つけられるような味がするよ」