――ピンポーン。
呼び鈴の音がして、わたしは跳ねるように玄関に向かった。
のぞき穴から外を見て、それからチェーンのかかった扉を開く。
「ね、ねえ、だれか、いた?」
後ろから青い顔で そっと呼びかける友達。
「ううん。だれも」
振り向いた瞬間、
――ピンポーン。
目の前にあるチャイムが、鳴った。
「いやぁああああ!」
友達が叫ぶ。
「やっぱり……。何かいるよ、絶対」
「幽霊とか?」
「いやああああ!」
耳をふさいで頭を振る。
見てる前で、何もないのに
いきなりチャイムが鳴ったのにはわたしも驚いたけど、
ちょっと考えれば話は簡単。
「ね、これただチャイム壊れてるだけじゃないの?」
ぐいぐいとボタンを押すと、ピンポンピンポンと音が返る。
「……え?」
それから連絡をして、しばらくののち、修理屋さんが来た。
修理後の報告を聞きに行っていた友達が戻ってきたとき、
その顔は憑き物がとれたようにさわやかだった。
「ほら、やっぱり故障でしょ?」
わたしが言うと、
「ううん。中におっきなクモが入ってたんだって」
中にクモ……? わたしが押した、ボタンの下に?
「それが動いたときに、勝手に」
「いやああああ!」
わたしは耳を塞いで頭を振った。