小さな病院、白いベッドの上、
小さな女の子が人形のように横になって眠っていた。
「ねえ、まだ許してくれないの?」
今日もやって来ては娘の頬を撫でる。
「あなたが寝てからもう十二年。
そろそろ起きてもいいんじゃない?」
その声を遠くに聞きながら、女の子は夢を見ていた。
大好きだった父親が死に、そのすぐ後で再婚した母親。
彼女がそれを非難すると母親は言った。
『あなたも大人になればわかるよ』
……大人になんてなりたくない。
彼女は、時を止めた。
「こんなに小さいままで。ちっとも成長してないけど……。
あなたももう二十歳なんだよ?
大人として認められる歳なのに。
たくさん楽しいこともある。起きて、自分の人生を過ごそうよ」
ふっ、と女の子の目が開く。
声を失ってただみつめるだけの母親。
少女は感情のないガラスのような目を
天井にむけたまま、つぶやいた。
「殺して」