都心の道で、激しくクラクションが鳴っていた。
その先頭には、タイヤだけで人の背丈ほどもある車が
動きもせずに止まっている。
「どうしたんだ」
黒いコートを羽織り、髪の半分が黒と白で別れた男が訊ねると、
「わからん。いきなり止まって、うんともすんとも言わないんだ」
はるか上から、助手席に乗った男が答えた。
「なら、わたしがなんとかしようか」
「あんだ、これを直せるのか?」
「当然だ」
男がマントを開くと、中にはぎっしりと工具が入っている。
「たすかった〜。急ぎで届けなきゃいけなかったんだよ」
「だが、わたしの修理費は高いぞ。三億円だ」
「いらねえよ」
にべもなく断られた。