「はらへった〜」
ざしゅ。
「水飲みてえ〜」
ざしゅ。
はるか広がる砂の上を、
一人の若者と三人の中年男性が力なく歩いていた。
一歩ごとに同じ言葉を繰り返す若者に対し、
中年男性たちは言葉すら出せないほど疲れきっていた。
「いまさらこんなことを言うのはなんですけど」
中年の一人が張り付くのどから声を出す。
「わたし、甘食ならもってますよ」
肩に提げたポーチから、がさがさと袋を取り出すと、
「よこせ!」
若者はその袋に飛びつくようにして奪い取り、走り出した。
「やめろ! 一気に食べるな!」
中年たちは口々に叫んだが、
「うるせえ! 遭難してから二日も食ってねえんだ」
走りながら袋を開け、口の中にひとつを丸々押し込んだ。
そのとたん、
「ん……もふっ!」
足が止まり、若者は砂地に両手をつく。
「う、ぼほっ。む……むぶ……!」
ごほごほとむせる彼。
中年たちは同情を浮かべた目で見つめる。
「むぶ……」
彼の頭がゆらぎ、砂の中にどさりと倒れた。
「さすがに甘食は、飲み物なしじゃ食べられんよ」
中年の一人がつぶやいた。