0258
2006-03-20
開けてはいけない
 明日は彼が初めてうちに来る日。
 せっかくだからおしゃれもして、
部屋もきっちり片付けて。
いいところを見せ付けようと思ったけど……。

 片付けながらふと見つけた服のせいで
夜中のファッションショーなんかやっちゃって、
来るのはもう今日。
 このまま寝ずにひどい顔で会うのだけはだめと
ベッドに入れば寝過ごして。
もはや彼の足音すら聞こえそうな時間になってしまった。
「ああ〜、どうしようどうしよう……」
 散らかった部屋に、もう手のつけようもなくて
あわあわしてるとなんだか夏休み最後の日を思い出した。
 なさけなさを通り越して、
こんな自分がいっそ好きに思えてくる。

 そこへ、携帯電話。出ると、
いま駅を出たところだと言う。
 こうなれば……。

 ぴんぽーん。チャイムが鳴った。
「はいはいはい。いらっしゃい」
 走りよって玄関を開けると、
「なんか息切れてない?」
 彼がたずねる。
「ええ? そんなこと、ないよ」
 にっこり笑って中へと招いた。
「へえ、片付いてるね」
「そう? いつもどおりだけど」
 ふっふっふ、気づいてない気づいてない。
 お菓子と紅茶でもてなして、軽い話で笑い合い。
 完璧なわたしに酔いしれていると、彼が訊く。
「あ、卒業アルバムってないの?」
「あるよ」
 思わず立ち上がり、押入れへ。
 おし……いれ……?
「なんですとぅ!?」
 わたしは叫んだ。