0270
2006-03-24
六ぶて!
「ねー、おねえちゃん」
 いとこのこどもがぽてぽてやってきて、
「てぶくろを逆から言うと、なーんだ?」
 にこにこの裏に黒い企みを込めて訊ねた。

 なつかしい。小学校のころか、一時はやったなあ。
「うーん……てぶくろ、なんだから……」
 もったいぶって考えるふり。
「ろ・く・ぶ・く?」
「違うよ〜」
 きゅっと口を尖らせる。
「あれ? あ、『く』が二つになっちゃった。
じゃあ、うーん、くろてぶ?」
「ちがうよ〜」
 いらいらとあしぶみ。
「ええ? 本当? てぶくろ、だから……くぶろて」
「もー! ろくぶてだよ〜」
 そこでその子の腕を取り、
「はい、一、二、三、四、五、六」
 ぺちぺちとかわいい腕をぶった。
 驚きと悔しさが入り混じる顔。
「も〜!」
「ふふふ、おととい おいでなさい」
 ふくれてぷりぷりと走って行った。
「……おとなげない人がいる……」
 ふとした声に振り向くと、いとこがわたしを見つめていた。