0277
2006-03-27
退路なし
 魔女裁判が行われ、一人の女が群衆の前に引き出された。
 口々に投げつけられる悪言が
地面を震わすばかりだったが、
一人の男が歩み出ると引く波のように静まっていった。
 男は女に言う。
「おまえは魔女の疑いをかけられている。
だがそれを晴らす機会をやろう。選ぶがいい」
 女は震えの止まらぬ体ですがるように男を見た。
「まずは水がめ。水に浮けば魔女として殺し、
沈んだまま死ねば人間として認めよう。
次に釜ゆで。熱湯の中生き続ければ魔女として殺すが、
死ねば人間として認めよう。
また次に首切り。首を切っても生き続ければ魔女として殺すが、
そのまま死ぬのなら人間であったと認めよう。
そして首つり。首をつられても生きつづけるのなら
魔女として殺し、つったまま死ぬのであれば
人間として認めよう」

 そしてひとつ息をすると、声を響かせた。
「さあ、選べ!」