「はい、では失礼します」
先輩がにこにこと頭を下げながら電話を切った。
「なんだか今回はずいぶん丁寧でしたね」
くだらない電話での製品の使い方案内。
横で聞いていたら、うちのサポート範囲を越えてたみたいなのに。
「うん。なんだかすごくいいひとだったから」
答える先輩に、係長の声。
「相手によって対応を変えるのはどうかと思うぞ。
平等にやってくれ」
「平等? わたしは平等ですよ」
きょとんとして言った。
「たとえば、悪いことをした人がいれば、叱りますよね?
いいことをしたひとがいれば、誉めますよね?」
「そりゃそうだ」
「だとしたら、悪いことをした人も誉めて、
いいことをしたひとも誉めたら、
それは不平等じゃありませんか?」
自信を持って言う姿に目を奪われていると、彼女は言った。
「義の人には義で返し、不義の人には不義で返す。
それがわたしの平等です」